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男たちへのファンタジー「クローズZERO」

シルバーウイークのある日、ひょんなことから「クローズ・ゼロ」という映画DVDを観るチャンスを得た。ヤンキーの喧嘩上等な強がりや粗野さがドン臭くて好きでない私がクローズゼロを見ることになろうとは!…
おや、なんだ?この爽快さ。
これ形をかえたスポーツドラマじゃない?男の子の成長物語じゃない。
先生が絡まないぶんだけ「ルーキーズ」より純粋に男の子たちのためのファンタジーになっている。
はい、魅力的な映画でした。

登場人物が多いわりに、しっかりと個性が書き分けられているし、それぞれの魅力がかぶらない。
なかでも特出して魅力的なのが山田孝之演じる「芹沢多摩雄」。

小栗旬くん演じる「たきやげんじ」が主人公なんだけと、彼の前に立ちふさがる壁として君臨する「鈴蘭高校の頂上に一番近い(喧嘩が強い)男」が芹沢多摩雄。
小柄で漫画チックな茶目っ気があって自然体なんだけど「こいつ強いよね」というオーラがある。実際、強い!それも飛び蹴りだのプロレス技だの堂々とした技で勝つ。

この男と他の男たちの違いってなんだろうね。

挑まれる喧嘩は買うが自分からは仕掛けない芹沢くんは、すでに鈴蘭のてっぺん取りの争いから「降りている」んじゃないかな。
軍団を率いる関係でそれは表に出せないが、本人はすでに次の大切なものが見えているに違いない。
もっと遊んでいたかったのに、ある日一足先に「おとな」になってしまった寂寥感みたいなものを抱えているが、慕ってくる仲間がいるから「いち抜けた~」とはできない。ならばいっそ仲間が脱皮するまで彼らを見守っていくか!という父性すら感じる。

ガキから脱皮したての、まだ世間に汚されていないぴかぴかの「おとなの男」が、芹沢多摩雄なんだろう。

クライマックスの激闘開始シーンの芹沢多摩雄は本当に魅力的だった。
雨の中、傘を投げ捨ててぶつかり合う男たちの中で、ビニール傘をゆっくりたたみ、ていねいに下に置いて、準備運動のように肩をゆっくりと回し、力いっぱい両のこぶしを突き上げて咆哮する姿の感動的なこと。
上にいる者の責任や堅苦しさから、自分の内なる野生を開放し、少年のような笑顔で乱闘の中に入っていく。いつかは卒業しなければいけない喧嘩にまみれた日常なら、この喧嘩を最後の喧嘩にしようという決心しているかのように、芹沢多摩雄は喧嘩を慈しみ楽しんでいる。

祭りの時間は終わり、新しい日常がやってくる。てっぺん取り競争から降りた芹沢と親友時雄の平穏そうなたたずまい。その視線の先に、さらに強さに挑む源治の姿。
芹沢の存在が源治にもたらしたものは何だったのかな。
強さだけでは人の上に立てないと言う教訓は、まだ源治には届いていないみたい。

このクローズ・ゼロは、すでに「クローズゼロⅡ」という続編ができている。
てっぺん取った源治がどのような成長をしているか、Ⅱも楽しみ。


そうそう、まったく女目線から印象的だったのは
高岡蒼輔くんの首から肩にかけての厚みというか丸みがとてもセクシーだったこと。
色っぽい肉体でした。
芹沢多摩雄の山田孝之くんは、普通の男の子が誰かのために一生懸命にがんばるという役柄が得意な人だったけど、そのやさしさを丸のまま抱えて男らしく変貌していました。芹沢多摩雄はこれまでの役柄とはまったく違った男のように見えますが、根っこのところは一緒かな。
山田孝之が演じることで芹沢多摩雄は愛らしく包容力のある男になったのかも…。
by windowhead | 2009-09-24 17:08

日本の西海岸・長崎からのつぶやきはビンの中の手紙のように漂いながら誰かのもとへ


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