青春の「もっちゃん」に会えた。「ホルモー六景」

「ホルモー六景」 万城目 学著  角川書店

あの「鴨川ホルモー」のサイドストーリーとも言うべき短編集「ホルモー六景」。
ちょっと古風でさわやかな青春がいくつも詰まっていた。
古風というのは語弊があるかもしれないが、最近のTVドラマやネット小説にあるドラマチックすぎる設定でなく、普通の若者の暮らしの中で、だれもが経験しそうな設定ばかり。しかし、舞台が京都であるだけで、異次元にいるような不思議なノスタルジーを帯びてくる。

6つのストーリーの中で、とても印象的だったのが「もっちゃん」と「ローマ風の休日」。
「ローマ風の休日」は、「鴨川ホルモー」で大活躍した「凡ちゃん」と、アルバイト先で知り合った高校生とのお話。
恋におくての凡ちゃんにハッパをかける高校生くん。高校生くんから、好きな彼はどんな人なのと聞かれた凡ちゃんは「だめそうな人」と言う。ダメそうな人だけど好きになってしまって告白できない凡ちゃんがいじらしい。
「鴨川ホルモー」を読んだ人なら、この凡ちゃんの恋が成就することは、知っている。
そして、映画「鴨川ホルモー」で、凡ちゃんの恋が成就した瞬間を、俳優・山田孝之が最高の演技で見せてくれたっけ。壊れためがねをはずした凡ちゃんに向かって、「そのほうがずっといいよ」と声をかける安倍君こと山田孝之。この瞬間、青春純愛ドラマを演じ続けてきた山田の本領が炸裂。たった一言で、この映画が、青春ラブストーリーだということを見せ付けてくれた。
映画のラストで、「安倍、行くよ!」とリードする凡ちゃん。「は~い」と付いていく安倍くん。聡明な女の子とダメ男のカップルは、微笑ましく、「ローマ風の休日」を読んだ後だからこそ、このまったりとした幸福感が続いて欲しいと思わずにはいられない。

「ホルモー六景」で、最もすばらしいという1編をあげるとしたら絶対に「もっちゃん」。
サラリーマンとなった安倍氏が、京大生時代の「もっちゃん」とのエピソードを思い出すお話。進むにつれ、どうも時代は現代ではなさそうなことがわかってくる。恋文を書くために万年筆を買いにいくもっちゃん。どこかしこにレモンを置くもっちゃん。安倍くんに「基」と刻印された懐中時計と文芸誌を残したもっちゃん。
文学好きには、この「もっちゃん」が誰だか徐々に読めてくる。それだけでもワクワクなのに、最後には「もっちゃん」の懐中時計が、現代の安倍君の手にあるというエピソードまでついてくる。
京都には、本当に様々な時代の顔があるんだということを思い出させてくれる一編だった。
さらに私にとっても、「もっちゃん」の本名は、高校生時代を呼び覚ますスイッチの1つなのだ。
数年前、京都では「もっちゃん」のブームが起こった。「もっちゃん」で有名なある場所が消えることになったためだ。このときも、高校時代の甘酸っぱい思い出がこみ上げてきたが、まさか「ホルモー六景」で再会することになろうとは…。

「ホルモー」という摩訶不思議な競技を柱に、場所を越え、時代さえも超えて、関係者が繋がっていくおもしろさは、京都だから成り立つのかもしれない。
「鴨川ホルモー」と「ホルモー六景」は、ダイナミックな流れを閉じ込めた「ブックカバー」なのかもしれない。
これを機会に、映画のほうももう1度観てみようかな。
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Commented by 抹茶 at 2009-10-25 01:44 x
茶楽さん、こんにちは。茶楽さんのクローズの記事を掲示板にリンクさせていただきました。きっとたくさんの山田ファンさんがお邪魔したことと思いますが、私の掲示板にも正夢さんなどが感想などをお描きになっています。お暇な時にでもぜひ遊びに来て下さいね。これからもよろしくお願いします。
Commented by windowhead at 2009-10-25 12:51
抹茶さん、コメントありがとうございます。
急にアクセスが上がり、びっくり!!
山田孝之ファンの多さに驚いています。
ぜひとも、掲示板、訪問させていただきます。
by windowhead | 2009-10-22 13:41 | 至福の観・聞・読 | Comments(2)