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「大洗にも星はふるなり」が今年初の映画になるとは

2010年最初の映画が「大洗にも星はふるなり」というのも、いかにも地方らしくて私らしいかなと。
主要都市での封切りは昨年の11月ごろ。
なにしろ、お話は、クリスマスの一夜、いとしのマドンナからの手紙で、大洗の海の家にあつまった男たちの空騒ぎ。
クリスマスも過ぎ、お正月も過ぎた今、やっと「ユナイテッドシネマ長崎」に掛かった。それも、午前と午後に1回づつ。映画館が宣伝することもなく細々と上映。ああ、この扱いの冷たさよ!「のだめ」と大違い。

見終わって感じたこと、「一般受けしないだろうなあ。誤解を恐れず言うと地方では受けないだろうなあ」と。
テレビでいえば深夜枠好みのコアなファン向け。深夜枠は1歩先を行く笑いや斬新なドラマ作りだが一般受けしない。
小劇場的な映画といえば「キサラキ」があったが、「キサラギ」は小劇場的なスタイルをとりながらTVの人気俳優たちを散りばめ一般受けをねらてはいた。
しかし「大洗…」は配役からして実験的。一般的に名前が知られているのは山田孝之くらい。地味な映画。

映画から得られるものはなにもないが、監督の意図、俳優の魅力と技量、アンサンブルは大いに楽しめた。
こんな映画があってもいい!!

印象的だったのは、小柳友。すごく自然にこのシチュエーションになじんでいた。
山田孝之は、前半すこしテンション上げすぎ。とは言っても、この芝居じみたハイテンションが監督の意図であれば、OKなのだろう。
彼がキャスティングされた理由は、きっと後半の演技にあるのだろう。
これでもか、これでもかと男たちのバカな妄想で取り散らかった芝居を集約させてオリオン座の輝く空を眺めながら「大洗にも江ノ島と同じ星が輝いている」というテーマシーンに持っていく役割は彼以外にいないだろう。
「鴨川ホルモー」でも感じたが、たった一言でドタバタ劇をラブストーリーに変化させる技は山田孝之の才能。今回も1つの台詞でごく自然に場面をしみじみした雰囲気に変えてしまった。
この「静」の存在感は山田孝之独特のものであり、彼が主役級の正統派俳優だという証明のようなもの。
クローズゼロ以来、役柄の幅を広げ、同年代俳優の中でいち早く、アイドルや若手から大人の俳優への脱皮を図っているような気がする。

佐藤二朗や、安田顕、ムロツヨシは、それぞれに「らしい」演技で安定。
戸田えりかちゃんのチープなマドンナはそのチープさゆえにリアリティー有り。夏の日の海の家での片思いはこの程度なのかも。


このような映画はテレビでいいと言う人もいるだろうが、それは違う。
「のだめ」や「花男」はテレビでもいいが、「大洗にも星はふるなり」や「キサラギ」は映画館や劇場の暗がりで集中してこそおもしろさを感受できる作品。
感動の大きさやわかりやすさだけにしか価値を感じない人は、1800円払う映画ではないと言うこと請け合い。
ばかばかしさとペーソスの分かる人向けって、そもそも贅沢すぎないか?
by windowhead | 2010-01-12 18:09 | 至福の観・聞・読

日本の西海岸・長崎からのつぶやきはビンの中の手紙のように漂いながら誰かのもとへ


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