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スペンサーにはもう会えない

ロバート・B・パーカーが亡くなったらしい。

もう、ずいぶん昔に、スペンサーへの興味は薄れていたが、作者の死を知ったことで、改めてスペンサーのことを考えています。
わが探偵偏愛歴の中でも、かなり強烈な存在だった男。
バーボンでなくビールとチーズバーガーを愛し、毎日ジョギングを欠かさず、フィッツジェラルドを愛読し、恋人スーザンのために料理の腕を振るう男。
なんだかとってもスタイリッシュだったのです。
ハードボイルドの中では女はいつも、悪女か、身体を張ってでも守るべき憧れの存在でしかなかったのに、スーザンはスペンサーの日常にあって、彼の手料理を食べながら一緒にアートについて語り合ったりしている。うらやましい関係だったのです。

フェミニストで元気なアメリカの象徴のような壮快さと身の丈のことで悩む子供っぽさが格好よくて…、周囲の人にスペンサー偏愛を撒き散らし、何人を仲間に引き込んだことでしょう。

バイブルは「初秋」「レイチェル・ウォレスを捜せ」「約束の地」など。バイブルの装丁も辰巳四郎氏による白ベースにスーパーリアリズムタッチの人物の一部とオブジェ。その真ん中にタイトルというなかなかセンスのいいもので、次の事件をを心待ちにしていました。
「スターダスト」ごろには、熱愛からも徐々に醒め、いつしかスペンサーやスーザンのことも、どこか遠くのできごとになっていきました。

それでも、その後、スペンサー以上に私を惹き付けた探偵は、それほど多くは現れていないようです。

世の中には、警察官やら鑑識さんやら、監察医やら、検事さん、弁護士さんなど巨大組織の一員や専門知識を駆使したお仕事、立派な専門職をもった人たちが日夜、難事件を解決しているようですが、私はどうも市井の探偵さんが好きなようです。

池袋のまこっちゃんこと真島誠くん、新宿の無認可保育園の園長先生ハナちゃんこと花咲慎一郎あたりが、今の私が愛する探偵さんたち。

彼らの活躍をいつまでも楽しむことができるためには、生みの親の方々の健康を祈ることと、好きだよー!と言いつづけ、本を買うことぐらいしか協力できないけれど…。

石田衣良さん、池袋がどんなに変化して行こうが真島フルーツ店はつぶさないでください。
柴田よしきさん、子供たちのために身体を張る花ちゃんを支える頼りがいのある女性たちをよろしく!

ちなみに、
まこっちゃん登場の最新作は『ドラゴン・ティアーズ 池袋ウエストゲートパークIX』(石田衣良著)
花ちゃん登場の最新作は『ドント ストップ ザ ダンス』(柴田よしき著)
by windowhead | 2010-01-25 14:03 | 至福の観・聞・読

日本の西海岸・長崎からのつぶやきはビンの中の手紙のように漂いながら誰かのもとへ


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