人気ブログランキング | 話題のタグを見る

楽しんで楽しませる

発売中の週間サッカーマガジン(No.1284)の中に、とても共感する文章があった。

西部謙司氏による連載コラム「ゴールのあとの祭り」。今回のタイトルは「楽しんで、楽しませる」。
横浜Fマリノスの木村和司監督と彼のモットーである「サッカーを楽しむ」ことについて書かれている。

木村和司という人は監督になる前からずっと「サッカーを楽しみ、観客を楽しませる」という姿勢と貫いてきた人だという。
横浜Fマリノスの選手にもサッカーを楽しんで欲しいと思っている。
プロのレベルでサッカーを「楽しむ」にはそれなりの力が必要だし、お客を「楽しませる」には、まず勝たなければいけない。
勝つにこだわると「楽しむ」余裕などなくなってしまう。「楽しんで、楽しませる」は、全クラブの理想であっても、現実はそうはいかないものになっているのが、今のJリーグの現状だ。
でも木村和司監督は、本気でそれに取り組もうとしているようだという。
そして、西部氏は、こう結んでいる。(以下、とてもいい文章なので本文から引用させてもらう。)
「…いま、特にサッカーは楽しくなければならないと思っている。子供たちが将来お金を稼ごうと思ったら、ビジネスで成功しようとするなら、野球やゴルフをやるのではないか。
でも、やっぱりサッカーを選ぶ子も多い。楽しいからだ。プロはサッカーの楽しさ、凄さ、奥深さを伝える義務がある。
勝つ楽しさだけなら、サッカーじゃなくてもいいのだ。サッカーだからこその楽しさ、それを追求して表現することを諦めないでほしい。」


確かに、今のJリーグにファンを楽しませ、自分も楽しんでいるプレーヤーがどれだけいるだろうか。
プロ選手の仕事はチームを勝たせることだが、それが選手にとって苦行になっていると、見る側は耐えられなくなる。勝ちにこだわりすぎて、ラフプレーや汚いプレーが多くなるとがっかりしてしまう。
女子供の意見、ライトのファン層の意見と言われるかもしれないが、やはりわくわくするプレーが見たいし、楽しいサッカーが見たい。楽しそうにプレーする選手に声援を送りたいものだ。

先日あるブログで「中村俊輔が復帰戦で楽しそうにプレーしているのを見て、この選手は終わったと思った。彼にはもう世界と戦う闘志がない」と書かれているのをみて、驚いた。
この試合は、1人の選手のクオリティーでチームが躍動し、活性化し、個々の選手の潜在能力まで引き出した好ゲームだったし、マリノスの選手たちがみんな楽しそうにプレーしていた。
それでも、楽しそうにプレーしていると、真剣でないと捉える人もいるのが、日本の実情なのだ。見る側がサッカーの楽しさの幅を狭めているのも現実なのだ。

日本に帰ってきた中村俊輔の使命は、木村和司監督の「楽しんで、楽しませる」という理想を実現することかもしれない。
彼の持ち前のセンスと高い技術力、海外で培ったゲーム感、加えてサッカーが三度の飯より好きというサッカー小僧っぽさは、すでに「楽しい」サッカーを体現している。
木村和司の全盛期のプレーをボールボーイとして間近で見て魅了された少年が、木村和司が初監督をするチームに「別格の存在」として戻ってくるというのもめぐり合わせだ。
「サッカーだからこその楽しさを追求し、表現する」ということは「中村俊輔のこれまでの生き方」そのものでもある。

「木村和司」と「中村俊輔」の融合から、新しい何かが生まれるような期待感がある。
by windowhead | 2010-03-19 03:29 | 紙のフットボール

日本の西海岸・長崎からのつぶやきはビンの中の手紙のように漂いながら誰かのもとへ


by windowhead