新選組!は参加できる大河ドラマとして新しい歴史を作った。
2004年 12月 24日
大河ドラマ「新選組!」も、26日の総集編を残すのみ。
今年1年、1回も欠かすことなく見続けた。これほどTVドラマを真剣に見たのも珍しいこと。
龍馬熱の強い地元で長年の隠れ土方ファンである私にとって、「新選組」が主役の大河というだけで感激ものだったが、加えて、山本耕史というクレバーな役者が土方像を演じてくれるというおまけつきだった。
私の中での土方への興味に、新選組以前の若い頃、多摩のバラガキといわれ、へたな俳句をひねり、薬売りをしながら、ひたすら武士にあこがれるただの若造の頃の屈折した思いを知りたいというのがある。
司馬遼太郎の「燃えよ剣」でも、この部分はしっくりとこなかった。山本耕史は、この若い頃の土方の姿を期待以上に具現化してくれたし、それ以上に、終始、的確な演技で1年間のドラマの土台を支え、最後まで土方という史実の人物を破綻なく演じきってくれた。土方ファンとしては、長年の想いへのご褒美をもらったような感がある。
このドラマを見続けている間にいろいろな現象を発見できたことも収穫の1つ。それらの現象とは…。
まず、放送開始当初というより、配役が決まった当初からマスメディアや一部評論家のあいだで酷評され、あたかも視聴者も少ないようなイメージを振りまかれていたが、これまでの大河ファンではない若い層にコアなファンを作っていったということ。
最初の頃は、ある漫画家のコメントに代表されるように、自分が作った独自のイメージとは違う大河の中の人物像を否定するような子どもっぽいブーイングもあった。しかし、それも3月ごろには、沈静化し、大河の中での人物像を自然に受け入れての感想を聞くことが多くなった。マスメディアの批判に反して、斬新な大河は早い時期に、受け入れられていたことの表れだ。
これらの現象をはじめ、、多くの情報を知るのに、インターネットが大きな役割をはたした。
今回、初めて、2チャンネルのあるカテゴリーを継続してのぞいていた。毎回ドラマが終わる瞬間からどんどん書き込みがなされ、深夜まで続く。熱い。どこから調べてくるのか情報がとても早い。そして、どんどん伝播していく。
もう1つ、特徴的なこととして「ブログ」の利用がある。
大河「新選組!」の感想を書いているブログが数多くあり、それぞれが、ものすごい情熱と愛情で書き続けている。視点も、文章も千差万別。それぞれが興味深く、情報満載。考察のポイントや掘り下げの深さは、やわな評論家やコラムニストが及びもつかないくらいすごい。
ブログの書き手はほとんどが10代から40代前半の女性だろうと推測される。
彼女たちを単純にコアな追っかけとみることもできるかもしれない。でも、ヨン様ファンの追っかけの姿とは明らかに違う。
ヨン様ファンの熱さと行動には、自分たちが作った現象なのに、いつのまにかメディアに煽られて画一的な行動しか取れなくなった純朴なファンの姿が見える。「キャー」と「素敵」と「かっこいい!」に代表されるような叫びと感嘆による幼稚な自己表現が特徴的なのに対し、「組!」のファンたちは、他の人と違う視点と言葉と情報収集力を武器に、自分の情熱と想いを文章や絵で表現することに力をそそいでいるように見える。
ブログのみなさんから、ずいぶんと貴重な情報をいただいた。特に白牡丹のつぶやきさん 、ASYLUMさん 、芸術一筋八十八歳蹴球白書は歓喜色さん、ありがとう。
彼女たちを初め、多くの「組!」ファンブログがすごかったのは、自己表現と知識ばかりではない、ネットワーク力を駆使して、願望を実現する実行力があるところだ。彼女たちは願望の実現のためには何をすればいいのかを知っているし最適な行動の方法と時期も知っていて、最適な時期に迅速に対応するスキルを持っている人々である。
彼女たちのスキルが発揮された一つの例として、ドラマ連載中のDVD発売決定がある。
NHKは、11月に、大河ドラマ「新選組!」の完全版DVDボックス]の発売を公表した。ドラマ途中でのDVD化の発表はこれまでになかったこと。いかに、要望が大きかったかの現われだと思う。また、このきっかけを作ったのはブログの書き手たちだった。彼女たちは、早くから「たのみこむ]に完全版DVDの製作・発売を要望するキャンペーンを仕掛け、それぞれのブログで記事やリンクで紹介し、キャンペーンの広がりの一助をかってでた。
新撰組!DVD化キャンペーンについて、「たのみこむ」では、以下のように紹介されている。「「たのみこむ」に大河ドラマのDVD化要望は数多けれど、ここまで賛同者が集まったことはありませんでした。大河ドラマ始まって以来の型破り的作品と評される大作のDVD化には、現在、賛同者約600名が集まり、総合ランキング14位となっています。」(たのみこむWEBより抜粋転載)ということで、多くのファンの要望が発売決定の要因になったことは確実。さらに、総集編のDVDも出るらしい。それも出演者たちによる座談会が併載されるという。さすがに、製作側もなにが求められているか学習してきている。
10月には、糸井重里の「ほぼ日刊イトイ新聞」が週1回、座談会形式の感想を掲載し始め、その会話の中でDVD化を要望。それに呼応するかのように、新選組ブログのほとんどが、「ほぼ日」サイトへのリンクをはった。
テレビ局側にも、変化があった。「スマステーション」などの民放番組が、「新選組!」応援のような企画をし、出演者が登場した。NHKでは、脚本家三谷幸喜が出演したトーク番組で民放連ドラだった古畑任三郎のテーマ曲をつかったり…。局の枠を超えて視聴者の欲するところにずばりと好球を投げ込む太っ腹度に驚かされた。
NHKは、スタジオパークで撮影風景を公開し、全国数箇所で出演者によるトークショーを開催。出演者とファンが思い共有できる場を作っている。これらの事前情報もレポもブログや2チャンネルなどでタイムリーに紹介されていった。
トークショーは、大河ゆかりのご当地以外の地にも、大河ファンを呼び込むという役割も果た。
「新選組!」の特徴の1つに舞台人・特に小劇場の俳優たちの出演がある。主要メンバーでも、土方、沖田、山南、藤堂、井上、捨助役の俳優たちは活躍の中心が舞台。「新選組!」で彼らのファンになった人たちは、彼らの舞台にも流れた。演劇界は一時的かもしれないが、「新選組!」を通して新しいファン層を獲得したのはまちがいない。
このように、今回の大河ドラマ「新選組!」は、これまでに見られなかった新しい形のムーブメントを起こしたことは、間違いないと思う。
その大きな特徴は、これまでの「見る」大河ではなく、「参加できる」大河であったところだろう。
今年1年、1回も欠かすことなく見続けた。これほどTVドラマを真剣に見たのも珍しいこと。
龍馬熱の強い地元で長年の隠れ土方ファンである私にとって、「新選組」が主役の大河というだけで感激ものだったが、加えて、山本耕史というクレバーな役者が土方像を演じてくれるというおまけつきだった。
私の中での土方への興味に、新選組以前の若い頃、多摩のバラガキといわれ、へたな俳句をひねり、薬売りをしながら、ひたすら武士にあこがれるただの若造の頃の屈折した思いを知りたいというのがある。
司馬遼太郎の「燃えよ剣」でも、この部分はしっくりとこなかった。山本耕史は、この若い頃の土方の姿を期待以上に具現化してくれたし、それ以上に、終始、的確な演技で1年間のドラマの土台を支え、最後まで土方という史実の人物を破綻なく演じきってくれた。土方ファンとしては、長年の想いへのご褒美をもらったような感がある。
このドラマを見続けている間にいろいろな現象を発見できたことも収穫の1つ。それらの現象とは…。
まず、放送開始当初というより、配役が決まった当初からマスメディアや一部評論家のあいだで酷評され、あたかも視聴者も少ないようなイメージを振りまかれていたが、これまでの大河ファンではない若い層にコアなファンを作っていったということ。
最初の頃は、ある漫画家のコメントに代表されるように、自分が作った独自のイメージとは違う大河の中の人物像を否定するような子どもっぽいブーイングもあった。しかし、それも3月ごろには、沈静化し、大河の中での人物像を自然に受け入れての感想を聞くことが多くなった。マスメディアの批判に反して、斬新な大河は早い時期に、受け入れられていたことの表れだ。
これらの現象をはじめ、、多くの情報を知るのに、インターネットが大きな役割をはたした。
今回、初めて、2チャンネルのあるカテゴリーを継続してのぞいていた。毎回ドラマが終わる瞬間からどんどん書き込みがなされ、深夜まで続く。熱い。どこから調べてくるのか情報がとても早い。そして、どんどん伝播していく。
もう1つ、特徴的なこととして「ブログ」の利用がある。
大河「新選組!」の感想を書いているブログが数多くあり、それぞれが、ものすごい情熱と愛情で書き続けている。視点も、文章も千差万別。それぞれが興味深く、情報満載。考察のポイントや掘り下げの深さは、やわな評論家やコラムニストが及びもつかないくらいすごい。
ブログの書き手はほとんどが10代から40代前半の女性だろうと推測される。
彼女たちを単純にコアな追っかけとみることもできるかもしれない。でも、ヨン様ファンの追っかけの姿とは明らかに違う。
ヨン様ファンの熱さと行動には、自分たちが作った現象なのに、いつのまにかメディアに煽られて画一的な行動しか取れなくなった純朴なファンの姿が見える。「キャー」と「素敵」と「かっこいい!」に代表されるような叫びと感嘆による幼稚な自己表現が特徴的なのに対し、「組!」のファンたちは、他の人と違う視点と言葉と情報収集力を武器に、自分の情熱と想いを文章や絵で表現することに力をそそいでいるように見える。
ブログのみなさんから、ずいぶんと貴重な情報をいただいた。特に白牡丹のつぶやきさん 、ASYLUMさん 、芸術一筋八十八歳蹴球白書は歓喜色さん、ありがとう。
彼女たちを初め、多くの「組!」ファンブログがすごかったのは、自己表現と知識ばかりではない、ネットワーク力を駆使して、願望を実現する実行力があるところだ。彼女たちは願望の実現のためには何をすればいいのかを知っているし最適な行動の方法と時期も知っていて、最適な時期に迅速に対応するスキルを持っている人々である。
彼女たちのスキルが発揮された一つの例として、ドラマ連載中のDVD発売決定がある。
NHKは、11月に、大河ドラマ「新選組!」の完全版DVDボックス]の発売を公表した。ドラマ途中でのDVD化の発表はこれまでになかったこと。いかに、要望が大きかったかの現われだと思う。また、このきっかけを作ったのはブログの書き手たちだった。彼女たちは、早くから「たのみこむ]に完全版DVDの製作・発売を要望するキャンペーンを仕掛け、それぞれのブログで記事やリンクで紹介し、キャンペーンの広がりの一助をかってでた。
新撰組!DVD化キャンペーンについて、「たのみこむ」では、以下のように紹介されている。「「たのみこむ」に大河ドラマのDVD化要望は数多けれど、ここまで賛同者が集まったことはありませんでした。大河ドラマ始まって以来の型破り的作品と評される大作のDVD化には、現在、賛同者約600名が集まり、総合ランキング14位となっています。」(たのみこむWEBより抜粋転載)ということで、多くのファンの要望が発売決定の要因になったことは確実。さらに、総集編のDVDも出るらしい。それも出演者たちによる座談会が併載されるという。さすがに、製作側もなにが求められているか学習してきている。
10月には、糸井重里の「ほぼ日刊イトイ新聞」が週1回、座談会形式の感想を掲載し始め、その会話の中でDVD化を要望。それに呼応するかのように、新選組ブログのほとんどが、「ほぼ日」サイトへのリンクをはった。
テレビ局側にも、変化があった。「スマステーション」などの民放番組が、「新選組!」応援のような企画をし、出演者が登場した。NHKでは、脚本家三谷幸喜が出演したトーク番組で民放連ドラだった古畑任三郎のテーマ曲をつかったり…。局の枠を超えて視聴者の欲するところにずばりと好球を投げ込む太っ腹度に驚かされた。
NHKは、スタジオパークで撮影風景を公開し、全国数箇所で出演者によるトークショーを開催。出演者とファンが思い共有できる場を作っている。これらの事前情報もレポもブログや2チャンネルなどでタイムリーに紹介されていった。
トークショーは、大河ゆかりのご当地以外の地にも、大河ファンを呼び込むという役割も果た。
「新選組!」の特徴の1つに舞台人・特に小劇場の俳優たちの出演がある。主要メンバーでも、土方、沖田、山南、藤堂、井上、捨助役の俳優たちは活躍の中心が舞台。「新選組!」で彼らのファンになった人たちは、彼らの舞台にも流れた。演劇界は一時的かもしれないが、「新選組!」を通して新しいファン層を獲得したのはまちがいない。
このように、今回の大河ドラマ「新選組!」は、これまでに見られなかった新しい形のムーブメントを起こしたことは、間違いないと思う。
その大きな特徴は、これまでの「見る」大河ではなく、「参加できる」大河であったところだろう。
by windowhead
| 2004-12-24 05:38
| 新選組!な人々