人気ブログランキング | 話題のタグを見る

争うは本意ならねど~ ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール

サッカーファン、いやスポーツが好きな人にはぜひとも読んでいただきたい本がある。
この本の主人公の勇気が、選手の健康を守り、その後のサッカー界の躍進を支えたともいえるからだ。
そして、本当の勇気とはなにか、を教えてくれるからでもある。

争うは本意ならねど~ ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール_b0009103_13421290.jpg
「争うは本意ならねど==ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール」(集英社インターナショナル)
著者は、あの「オシムの言葉」を書いた木村元彦

2007年春、当時川崎フロンターレに所属していた我那覇選手は、風邪の回復のためチームドクターが取った処置がJリーグアンチドーピング規定に抵触するということで処分を受けた。
その後、我那覇選手に取られた処置は、国際的なアンチドーピング規定にも、日本の規定にも、触れていないということがわかったが、Jリーグは、すでに処分は過去のことだとして我那覇選手への処分を撤回しなかった。
日本代表FW候補でもあった彼は、過去のことにこだわるより前を向いて進めとのチームの助言もあり、一時は受け入れようとした。しかし「サッカー選手を辞めたあとも汚名を着て生きるのは悲しい。サッカー選手を目指したいと言う息子のためにも、堂々とサッカーができるようになりたい。」という人としての尊厳を守るために、第三者機関に仲裁の申し立てをした。
Jリーグ側があくまでもスポーツ仲裁裁判所(CAS)以外の仲裁に応じないという姿勢だったので、我那覇選手はその費用も手続きも一切個人の負担としてCASでの仲裁を申し立て、勝利を勝ち得た。

ことの発端は、直接取材をしていない記者が書いた記事だった。
その記事のみを信じ、当事者の声に耳をかさなかった上部組織による汚名。
本来守ってくれるべき組織が、身内のメンツのため冤罪を認めない。
穏やかな性格で、もっとも争いを嫌う男が、人としてのプライドを守るため選手生命をかけて、この不条理に挑んだ。
そしてそれを多くの人たちが支えた。

その一部始終が、木村氏の取材で明らかになった。
人として最も大切なものを守るために真っ直ぐに行動する我那覇選手と支える人たちの姿に感動する。
特に、チームの壁をこえて協力し合ったチームドクターたちの「医者としての使命感」には、心強さとともに尊敬の念さえ湧いてくる。
読みながら、何度もこみ上げてくるものがある。
本を閉じるとき、我那覇選手とかかわった人々に多幸あれと祈りたくなる。

この本は、ぜひ購入して読んでほしい。
CAS裁定のために我那覇選手が負担しなければいけない費用の総額は3400万円を越えていた。
この本の収益の一部がCAS裁定費用を援助するための「ちんすこう募金」として我那覇選手に送られるという。






当時、私もこの事件についてブログに感想をかいていた。
すると、フロンターレのサポーターの人や、我那覇選手の支援の人から、コメントや情報が送られてきた。
サンフレッチェ広島のチームドクターがアップしてくれたアンチドーピングにかんするホームページを教えていただいたとき、チームドクターたちがクラブを超えて支援し合っていることを知った。
選手会の募金や、ちんすこう募金の広がりも知った。
そして、CASの裁定がおり、冤罪であったことが証明された。
これはサッカー界にとっても、スポーツ界にとっても大きな成果だった。
しかし、サッカーライターや雑誌などの取り上げ方は、それほど大きかったとは感じられなかった。
あるライターなどは、我那覇選手になんの落ち度もないという裁定が下った後も、サッカー協会の機嫌を取るかのように、選手側の意識の甘さも問題というような記事を書いていた。
なぜ、ライターたちがこの潔白の証明に、消極的なんだろうと気になっていたが、その理由もこの本から透けて見えてくる。
私の中で「プレヤーズファースト」をサッカーを見る基本にしたいと決めた事件でもあった。
(私も、この冤罪事件に我那覇問題というタグをつけているが、木村さんがいうように、この言い方をかえなければいけない)

過去に書いたもの====
我那覇選手の決断を応援したい
我那覇選手サポートにJリーグ選手協会が動いた

我那覇選手の勇気に応えた審理を期待します
我那覇選手、勝訴!…本当によかった。

我那覇選手の違反記録をFIFAが抹消
by windowhead | 2012-01-31 13:43 | 紙のフットボール

日本の西海岸・長崎からのつぶやきはビンの中の手紙のように漂いながら誰かのもとへ


by windowhead