「グロリアス・デイズ」痛く切なく凛とした人々の話

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「グロリアス・デイズ 〜 終わりなきサッカー人生」
小宮良之 著 集英社


昨年末、ヴィファーレン長崎がプレーオフを闘っていたころ読んだ1冊。
著者の「敗れざる者3部作」(と、私が勝手に呼んでいる)の締めくくりの本となるのかな。

『プロサッカー選手』という特殊な職業を選んだ男たちの様々な人生。
サッカー選手として光が、日本代表だったり、J1チームスタメンだったり、海外移籍なら、光の場から退き、下のカテゴリーでもがき、そこからも弾かれながらも、サッカー選手を続ける男たちにはどんな思いがあるのだろうか、どんな人生を送っているのだろうか。

豊田陽平、中山悟志、小林大悟、坂田大輔、水沼宏太、水野晃樹、藤本主税、小澤英明、北島秀朗、
この本に登場する選手たち。
それぞれにそれぞれの出自があり、人生があり、悩みがあり、納得があり、戦いがある。
そして、それぞれがこの時点でサッカー選手であり続けようとしている。

俊輔ファンの私にとって高校選手権で俊輔を叩きのめした北島秀朗は、いつまでも眩しく輝ける太陽なのだ。昨シーズンロアッソ熊本のキタジをVファーレンホームに迎えたが、途中出場のキタジは相変わらず大きく脅威に見えた。
水野晃樹と本田圭祐の今の立場の差は、決して実力だけの差ではない。ほんのちょっとした岐路の選択の時期やチャンスの差がもたらしたもののような気もする。だからといって水野はサッカー人生を駆け上ることを諦めてはいない。
恵まれたサッカーエリートの家に生まれた水沼宏太がタフで泥臭いプレーで2得点をぶち込んだ2012シーズンのマリノス戦を目の前で見た時の衝撃は忘れない。
藤本主税は私にとってはうざったい選手だ。ずっと好きになれない。でも彼には熱狂的なファンがずっといる。彼のプレーに救われた選手やサポーターたちがたくさんいる。
そして中山悟志
かつて浪速のゴンと呼ばれていた中山悟志選手。
Vファーレン長崎でもゴンと呼ばれていたのかな?そういえばキャリアの長いサポさんはゴンちゃんと呼んでいたような…。
ゴンちゃんは、Vファーレン長崎のJ2昇格の立役者の一人だ。しかしJ2昇格した昨シーズン、彼がJ2のピッチに立つことはなかった。そればかりかシーズン半ばでFC琉球にレンタル移籍してしまった。
Vファーレンの躍進が続く中でも中山を求めるファンは確かにいた。ホーム水戸戦だっただろうか、押されっぱなしの試合中、ホーム側メインスタンドから「中山を出せー!」という野太い声が起こった。「あら中山の移籍知らなのよねえ」と思ったが、そんなしたり顔した自分を少し恥じた。その声の主は、今今のVファーレンファンではない。中山の活躍を知っているからこその叫びなら少なくとも2012シーズン以前からのファンなのだ。そんな人が中山の移籍を知らないはずがない。彼の叫びは中山を切っただけの覚悟を見せろよ!という叱咤だったのかもしれない。そんな叫びを発するファンをもっていたのだ中山悟志というFWは。
この本で中山悟志というサッカー選手の本当の姿に触れた気がした。

登場するサッカー選手たちは、自分の魂を削りながらもサッカー選手である続けた人たち。
もがきながらも自分の中にあるサッカー選手に正直に向き合ってきた選手たちだろう。
だからこそ「グロリアス・デイズ」(素晴らしき日々)なのだろう。
そしてこの本が感動的なもう1つの側面は、選手たちを支える家族のピュアな愛の姿だ。
母から父から、妻から子供たちから、これほどまでに愛されている男たちがいる。
うらやましいじゃないか。

久しぶりに、懐かしい気持ちになった。
ずっと昔、そう沢木耕太郎著「一瞬の夏」を読んだ時の気持ちが蘇ってきた。
私の中では、今でもスポーツノンフィクションといえば「一瞬の夏」が頂点にある。
沢木耕太郎がボクサーカシアス内藤のその後の人生にまで関わっていくことになった運命の作品だ。
小宮良之氏にも「グロリアス・デイズ」をはじめ「アンチドロップアウト」や「フットボール・ラブ」に登場する選手たちの人生との関わりを抱え続ける覚悟があるんだなあと漠然とだけど感じた。

あとがきに、驚くべきことが書かれていた。
小宮氏の中には会津の血が流れているのだという。
そのせいか、新選組の義憤や白虎隊の悲劇、壮絶なろう城戦が身近にあり、敗北覚悟で意地を貫く人々に惹かれるところがあるという。戦いに敗れても人生には負けていない。その物語を書き続けたいという。
「戦いに敗れても人生に敗れていない」
人間のど真ん中を支えるような言葉だなあ。
 
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by windowhead | 2014-01-11 16:29 | 紙のフットボール | Comments(0)