再び「松田直樹を忘れない」

3年前の8月2日午前10時頃、松本山雅の練習場でマツが倒れた。
そのことを知ったのは昼頃だったと思う。ネットにアクセスしていた仕事場の女性が「松田というサッカー選手が練習中に倒れたそうですよ」と教えてくれた。松田…私の記憶の中にある松田と言う選手は松田直樹選手しかいないはずなのに、熱中症なの?とか言いながらディスプレイを覗き込んで愕然とした。そこに書かれていたのは「心臓マッサージを受け救急車で搬送された」という文字だった。
そして2日後の8月4日、マツは還らぬ人になった。
マツを失ったことの大きさを痛感したのはテレビに映し出される中村俊輔の憔悴した姿とそのすぐ後の柏戦での俊輔の鬼神のような闘いぶりにだった。
映像にはなかったが親友・佐藤由紀彦のそのときの様子は「松田直樹を忘れない〜闘争人Ⅱ永遠の章〜」(二宮寿朗著)に書かれていた。大切な人を亡くした者の悲しみを通り越した虚無感がその文章からひしひしと感じられた。

中村俊輔はその後ずっとマツの顔と3が書かれたアンダーシャツをユニフォームの下に着て闘っている。「マツさん大事なのはやっぱりハートだよ」と言ってマツを喜ばせた俊輔はマツが愛して止まなかった、そして一番の居場所と思っていたはずのマリノスを引っ張って闘っている。いまのマリノスでは一番のファイターだ。

佐藤由紀彦は私の街のクラブ「Vファーレン長崎」のキャプテンを務めている。
マツを亡くした2011年、Vファーレン長崎はJFL優勝し、J2への切符を手にした。最終戦、選手サポーターとともに喜び合う由紀彦はマリノス時代のマツのユニフォームを着ていた。
最近、長崎のゲームで由紀彦の姿を見ない。練習を見に行ったが、クロスの精度は今でのチームで一番だし、闘う気持ちも消えていない。まだまだ今のVファーレンの選手達より1枚上のプレーヤーだと思うのだが、監督の構想にそぐわないのだろうか。
少し前、Vファーレン長崎の記事を書かれる藤原さんがtwitterで「佐藤由紀彦くんは一振りの日本刀のようだ」とつぶやかれていた。なにかのインタビューをされたときに感じられた雰囲気なのだろう。由紀彦に研ぎすまされた覚悟みたいなものを感じる人は私だけではないんだなあと共感した。
今シーズンの10番のユニフォームにサインをもらうため試合後、スタジアムを離れる由紀彦に近づいてユニフォームを出し、サインをお願いした。ユニフォームとマジックを手にした由紀彦から「ありがとうございます」という言葉が発せられた。「えっ、ありがとうと言うのはわたしのほうなんだけど?」と思って顔を見たが彼はどこに書きます?という表情だった。彼の「ありがとうございます」の言葉がとても端正で心にしっかりと残っている。
いまVファーレン長崎を応援に行っているのは、まだ佐藤由紀彦がいるからだ。
佐藤由紀彦がどんなことを考え、どのような覚悟で今のチームで頑張っているのか、ただのファンでしかない私が本人から聞くことはできない。ぜひとも取材できる立場にある記者やフリーライターの人たちに「佐藤由紀彦」に迫って欲しいと思っている。

マツが亡くなった日、いつも目の前にある「松田直樹を忘れない」を再読している。
ここには生前のマツとともに佐藤由紀彦がいる。
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by windowhead | 2014-08-04 09:38 | Vファーレン長崎 | Comments(0)