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原作へのリスペクトが感じられるNHKドラマ「クライマーズ・ハイ」

「横山秀夫にはずれなし。」最新作の「震度0」まですべての作品を読んでいるが、やはりそう感じる。その中でナンバーワンをあげろと言われれば、私は即座に「クライマーズ・ハイ」をあげる。
「クライマーズ・ハイ」は2003年出版されると同時に飛びつくようにして読み、男性向けサイトで紹介記事をかいたので、いまさら本のレビューを書く気はないが、とにかくむき出しの人間的な感情のエネルギーに巻き込まれながら、読み終わったときはなぜか山頂の空気のようにさわやかな涙がこみ上げていた。


NHKがこの本を映像化したことを知らなかった。
昨日の新聞でタイトルを見て、びっくり。早速録画し、放映された前編を見た。

前編だけだが、原作へのリスペクトが強く感じられるすごくいい作品に仕上がっていると感じた。
イントロ部分から実に原作に忠実。それでいて、的確な俳優をもってきているので、原作ではイメージしにくい人物も具体的な姿で立ち上がってくる。
山岳ロケと撮影も苦心されているし美しい。大きなドラマになっている予感。

なにより、キャスティングが最高。
悠木役の佐藤浩市は、この役、絶対に人に渡したくなかっただろう。すごく合っている。
キャスティングのすばらしさは、主人公以外にも現れている。というより、全てのキャスティングが的確すぎるほど的確。
これが客の入りや視聴率が気になる映画や民放だったらこのようなキャスティングは不可能だったのではないだろうか。どこかでサプライズな配役をするとか、集客力のあるアイドル系タレントを入れるとか、必要ない女優の配役をいれるとか、二次的部分に力がそそがれて、中味からリアリティが消えていくことが多いだろう。この作品にはそんなものが見えない。必要な位置に的確な俳優が配され、飾りのような配役はない。
スターばかりがいるわけではない。地味な俳優さんたちだが、実力者ぞろい。岸辺一徳や杉浦直樹など要所を押さえる迫力。三石研や大森南朋のリアリティ。意表を付かれたがなるほど誰よりも適役だと思えた赤井秀和の安西役。隙間なく俳優が生きているし臨場感に溢れている。

後編は、谷川岳一ノ倉沢衝立岩登山のシーンがさらに大きいものになってくるはず。安西の息子を演じる高橋一生の持ち味にラストの清涼感を期待したい。そういえば、高橋一生は、映画「半落ち」でも事件の核心に繋がる青年の役で清潔なオーラを放っていた。はからずも「半落ち」も横山秀夫作品。今回はさらに男らしさも加わっている。いい俳優さんだなあ。

来週の土曜日がまちどおしい「クライマーズ・ハイ」。

NHKにまたまた「ありがとう」といわなければならないね。
by windowhead | 2005-12-11 15:42

日本の西海岸・長崎からのつぶやきはビンの中の手紙のように漂いながら誰かのもとへ


by windowhead