それがどうした、彼は天才だ!

「タックルができない?ヘディングができない?それがどうした、彼は天才だ!」

まるで、子供をかばう親バカ父さんのようなほほえましさ。この小気味のいい啖呵を切ったのは
スコティッシュプレミアリーグ優勝を決めたセルティックのゴードンストラカン監督。天才だといわれたのは中村俊輔選手。彼にとって、信じる人からもらった最高のほめ言葉だ。
サッカーの本場で、日本人が「助っ人外人」として全試合に先発出場し、優勝の立役者となった。そのうえ、リーグの年間MVPと年間ベストゴールのダブル受賞したというのは、日本のサッカー界にとってもエポックメーキングな出来事だろう。
MVPもリーグの選手による投票で選ばれるもので、対戦したすべてのチームから得票したのは中村選手だけだったらしい。完璧なMVPだ。
たった2年弱で、スコットランドの名門「セルティック」のチームからもサポーターからも信頼され愛される存在になるのは、並大抵のことではないが、スポーツ選手にとって、最高に名誉なことだろう。


このゴードン・ストラカンのあっぱれなほめ言葉を聞いて、あるエピソードを思い出した。
これもこのうえもなくあぱれなほめ言葉がからむ。
先日読んだ木村元彦著「蹴る群れ」に出てきたエピソードだ。

1982年、イギリスとアルゼンチンの間でフォークランド紛争が勃発し、両国は国交を断絶した。当時イギリスプレミアリーグ「トットナム」には、アルゼンチン人プレーヤー、オズワルド・アルディレス、通称「オジー」がいた。
国交断絶の翌日の試合で、トットナムのサポーターたちは、オジーに向かって何をしたか?
彼らは、オジーにブーイングするのではなく「オジーがいてくれるなら、フォークランドなんかくれてやる」と書いた横断幕を張って、敬意を表したという。
スポーツが作った信頼関係を、政治や思想なんかに踏みにじられてたまるもんか!という心意気と、大切な選手への愛情にあふれている壮大な啖呵だ。

サッカー選手にとって、最高の栄誉はバロンドールなんだろうけど、オジーのように、サポーターから国を相手取ってもあんたを選ぶよ!と言ってもらうことも、バロンドールに匹敵する栄誉ではないだろうか。

オジーと中村選手は接点がある。
オジーは、中村選手が横浜マリノス在籍時に監督だったことがある。たしか中村選手がJリーグ最優秀選手をとった2000年当時の監督だったと記憶しているが、どうだろう。
当時のオジーにとっても、中村選手は「特別の存在」だったとサッカー雑誌のインタビューで語っていた。



中村俊輔選手が来期も「セルティック」に残留するというようなニュースもちらほら出てきている。
ファンとしては、円熟期の今、もう1つ上のクラスでプレーして欲しいと思ったりする。
彼が昔から憧れていたスペインのリーグは、彼が憧れていたころからすると輝きはあせているが、それでもまだ憧れは続いているのだろうか?
「レアル」か「バルサ」、まあ「バレンシア」くらいまでは、中村選手の移籍金が払えるかな?「アトレチコ」ではチャンピオンズリーグに出れないしねえ。
現実的なのは、スペインより「プレミア」のほうだと思うけど…。中村選手のプレースタイルに合わないリーグと言われるけど、セルティックでやってきているから、いけるんじゃないかなあ。チームのトップ選手ではなく、スーパーサブ的な位置から、またまたレギュラー争いをする中村選手を見たいと思ってしまう。

しかし、セルティックで、違ったスキルをつけるという生き方もあると思う。
ゴードン・ストラカンやコーチたちから信頼され、いい関係を持っているからこそ、コーチ、監督など、指導者としてのスキルも学んでいくことができるのではないかと。
このスキルを積むなら絶対に日本より欧州のほうがいい。将来、欧州チームを率いる初の日本人監督というのも夢ではないかもしれない。

波乱に富んだ中村選手のサッカー人生だが、チームの監督には恵まれているとおもうし、彼は、これまで所属したどのチームの選手やスタッフ、サポーターとも良好な関係を作ってきている。これは、中村選手の大きな強みだと思う。

いつか、自分が率いるチームで、選手のために気持ちのいい啖呵が切れる監督になっている中村俊輔を想像してみよう。

今、現実味はないけど、ワクワクしませんか?

そこが、ファンタジスタってことなのかな。
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Commented by めいくう at 2007-04-28 09:59 x
>「オジーがいてくれるなら、フォークランドなんかくれてやる」

なんてカッコイイ!うるっときました。
俊輔の才能を愛してくれていた監督として記憶していたアルディレスに、そんないいお話があったとは。

きょうのスポ新によると
「サッカ-以外のことでは目立ちたくない」とか・・。
こんな小さな一言にキュンとなります。(^^ゞ

>選手のために気持ちのいい啖呵が切れる監督になっている中村俊輔

お腹にたっぷり贅肉をつけた俊輔を想像するくらい、ニヤニヤしてしまいます。
今のところ、両方ともありえない(笑)


Commented by windowhead at 2007-04-29 14:21
そうですね、選手のために啖呵がきれるようになる前に、二川君に声をかけられるようにならなければ…。
それでも、中村俊輔は、いい指導者になりそうな気がします。
そうそう、今出ているスポルティーバの面白い考察がありますよ。
貴種流離譚」としての「中村俊輔物語」。興味深いですよ。
by windowhead | 2007-04-28 03:32 | 紙のフットボール | Comments(2)