人気ブログランキング | 話題のタグを見る

北原さんの土方歳三

北原 亞以子さんが亡くなった。
その作品の多くを読んだわけではないが、時代小説、なかでも市井で生きる名もない人々の物語の良さを教えてくれた作家の一人だ。

幕末好きの私には、北原さんの書いた土方歳三は、心に残る。

「降りしきる」という短編と長編の「暗闇から~土方歳三異聞」

どちらの土方もとげとげしてつっけんどんで「ばらがき」の本性で描かれているが、その奥に潜む不器用な思いやりが垣間見えて愛おしい男だ。
どちらにも男で人生を狂わされて女がでてくる。
女の寂しさや人恋しさ、やるせなさが手に取るように伝わってくる。
それを見下すように接しながらも、気遣う土方や沖田の根っこの優しさがさらに物語の悲劇を深める。(降りしきる)

北原さんの土方はいい!
女の本性から見ると本当にいい男とは、こんな男なんだろうなあ。
それはまた危険な男でもあり、決して安定した幸せを持ってくる男ではない。
物語のような男が、130年前実在していたんだ。
春になると土方歳三や沖田総司を想う。
二人がもっとも幸せだった時期は新選組になるまえのただのわるがきと天才児であった日野時代ではないだろうか。春のれんげ畑を走り回る少年の時代。
北原さんの土方や沖田には、そんな子供時代が見えてくる。

北原 亞以子さん、いい物語をありがとう
やすらかに
北原さんの土方歳三_b0009103_10211050.jpg

by windowhead | 2013-03-16 10:21 | 至福の観・聞・読

日本の西海岸・長崎からのつぶやきはビンの中の手紙のように漂いながら誰かのもとへ


by windowhead