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18年前の本「魂の叫び J2聖戦記」に再び感動

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先週、本をしまいこんでいるボックスを漁っていたらこの本が出てきた。
18年も前に書かれたスポーツドキュメント「魂の叫びーJ2聖戦記」(幻冬舎文庫)。
ずいぶん昔、中西哲生氏の活動に興味を持った時に読んだものと思う。(でないと金子達仁嫌いの私が買うはずないもの)

「あー、Jリーグ王者・川崎フロンターレもJ2の歴史があったんだよね」と軽い気持ちで手にとって再読し始めたら、やめられなくなった。
これを買った頃にはすでにサッカーファンだった。人気のスポーツライターの取材と選手の日記をベースにした構成が面白かったし、中西哲生という選手の一生懸命に絞り出す言葉も興味深かったので読んだ後もこの本を手放さなかったのだろう。
今再読したら、第1章のたった40ページ足らずの文章でさえも、ものすごい臨場感で迫ってくる。
1998年11月15日の博多の森球技場。川崎フロンターレとアビスパ福岡の試合からこの本は始まる。
川崎フロンターレはこの試合にJ1昇格がかかっていた。
試合の決め手となるいくつかのシーンとその時の選手たちの心の模様がヒリヒリと伝わって来る。このままいけば勝てるという思い、サポーターの声援の中にあって不意に襲ってくる恐怖感、刻一刻と迫ってくる運命の時計の針、最後の最後に手のひらからこぼれ落ちてしまった勝利、打ちひしがれる心…。
フロンターレは最後の最後にJ1昇格を逃してしまった。この時の選手には現在のフロンターレ監督・鬼木達の姿もあった。
この敗北に責任を感じながら翌年J2で戦う中西哲生の1年間の日記(正しくはフロンターレファンサポに向けてのweb日記)。読者やサポーターに向けて真摯に前向きに語りかける日記はその時その時の背景やチームの様子を取材で補足してあるので彼の心模様やチームの雰囲気が臨場感をもって伝わって来る。
そして1年後、中西哲生と川崎フロンターレはサガン鳥栖を延長Vゴールで破って悲願のJ1昇格を果たした。

チームの歴史の中で節目の1年を300ページものノンフィクションとして残せたチームは少ないだろう。そこには金子達仁、戸塚啓という実力派ライターを引きつける強いメンタリティーと魅力的なサッカーとチームの今を必死で伝えようとする選手の情熱があった。このDNAは今の川崎フロンターレにも受け継がれている。そして18年後、チームは初の日本一の称号を掴み取った。
この本が伝えるものは川崎フロンターレの戦いだけではない。昇格を目指して戦うJ2の本質と魅力を伝える本でもある。読みながらずっと感じていたヒリヒリとした臨場感はVファーレン長崎を応援して体験した2回のプレーオフでの悔しさと今回のJ1昇格の歓喜を経験しているからだろうか。いやいやライフワークのように応援している超有名選手がいて、J1はおろか海外サッカーまで追っかけていた私が地元のJ2チームにはまって5年間もJ2チームの応援を優先してきたのは間違いなくJ2の魅力に惹かれたからだ。初昇格を果たした地元チーム・Vファーレン長崎とそのファンは、フロンターレですら20年近くかかったJ1優勝への道の険しさを実感する日々が待っている。しかしそれこそがJ1の魅力なのだ。

この本は20年近く前の本だ。書店の棚にはない。出版社でもすでに廃版されているだろう。
どうしても読みたい人は図書館か古書店をあたることになるだろうが、その努力に報いるだけの感動をくれる本だと思う。








by windowhead | 2018-01-31 05:16 | 至福の観・聞・読

日本の西海岸・長崎からのつぶやきはビンの中の手紙のように漂いながら誰かのもとへ


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