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紙のフットボール

前節、最下位のVファーレン長崎が7連勝で破竹の勢いだった名古屋に勝った。
順位こそ上がらなかったが、久々の勝ちは嬉しかったし、J1昇格ころの長崎の良さがまた見えてきたのは更に嬉しかった。
長崎は新しいチームだし、アウエーでもあって実況解説は名古屋中心になっているのは当たり前のことだけど、J1になってから強く感じるのは、文字にした記録やエピソードが少ないと語る方も語りようがないんだなあということ。

サッカーの楽しみ方はいろいろある。
絶対スタジアムで見るべきという人もいれば、放映のほうが楽しめるという人もいる。私はどちらかというと放映のほうでも楽しめるほう。
だからスタジアムに行っても、帰ってから必ずDAZNする。スタジアムに行けない時なDAZNを繰り返し見ている。
これだけでは物足りない。監督のコメントや選手のコメント、戦況分析やデータなどみて自分なりにいろいろ考えるのが好きなほう。
素人なので戦術、戦況分析などできないが、スタジアム観戦中に感じた違和感や発見や漠然とした空気感の確認や裏付けをコメントや戦況、戦術分析やデータなどからもらうことも多くて、絶対に文字に起こしたものが欲しいほうだ。
昔は週刊のサッカー雑誌、月刊の雑誌、Numberのような選手、監督など人をあぶり出すニュージャーナリズム的な文章を集めたものもあり、サッカー関連本もたくさん出ていたので疑問の解決を掘り起こすのがものすごく楽しめた。今でもエルゴラのように隔日で出ている専門紙もあるが、雑誌や本は1本の記事の文字量が多い分だけ内容が掘り下げられる。インタビューなどは今のように要約された上澄みみたいなものでなく、準備された質問とそれに見合うかそれ以上に吐露された言葉があった。
プロが書いたものを読んで、その場面の録画があればそれを見て確認する楽しみを個人的に「紙のフットボール」と呼んでいた。

最近はプロの方かサッカー経験者かわからないが、そのチームに詳しい人がブログなどで戦術分析などしておられて、それを読ませてもらっている。さらに映像を使って戦術やプレーを解説している方もいる。それらがすごく勉強になるし、疑問を解くカギになってくれている。
でも残念ながらインタビューだけは限られた人しかその場が与えられないので希薄なままだ。別に好きな食べ物や女性像などが欲しいわけでない。その選手が自分のプレーをどう感じたか、今どんなプレーに興味をもっているのか、記者が要約した簡潔な文章でなく選手の言葉で聞きたいのだ。生の言葉はその時の空気感まで伝えてくれる。写真がなくても状況や選手の姿を浮き彫りにしてくれる。

じつは名古屋戦で面白いことがあった。
後半中頃だったかな、ジョー選手のフリーキックのシーンがあった。
蹴られた瞬間長崎の壁の裏側で誰か転んだように感じた。なんだかわからないが気になるシーンとして頭に残っていた。
その日の深夜か翌日、あるサッカーに詳しい長崎支局の記者さんがTwitterで
「跳んだ壁の下にスライディングでブロックに入って下のコース消す飯尾選手のプレーにチームとしてのインテリジェンスを感じた」
という発言をされていて、「あーそうだったのか、こんなやり方があったのか!飯尾くんすごい、俊輔見てる?」と大声をあげてしまった。
なぜ「俊輔、見てる?」なのかというと、その1、2日前に見た中村俊輔選手のインタビュー記事の中で「ジャンプした壁の下を狙うFKを時々見るよね。自分もそれはまだ決めてないので決めたいね。でもそうなると寝転んでスペースを消す壁も出てくるかも。」と言っていて、寝転ぶ壁ってなんかカッコ悪くて想像しがたいなあ」と思っていたところだった。
それをスライディングという方法で対応しようとする試みを我がVファーレン長崎がやったのだ。寝転ぶより絶対かっこいいしキッカーに下を狙うミスリードもできるわ! 俊輔選手はその言葉の後に「寝転んだ壁を回り込んで入るボールを蹴るとか、やってみたい」と言ってたけど、そんなの蹴れるのは彼ぐらいしかいないだろう。このV長崎の壁の下ブロック対策を俊輔選手が見てないといいけどと思いながらも、いやこれを見てどう感じたかのコメントが欲しいと思っているのが私の本心。
それと同時にあの方法を考えたのはだれなんだろう?という興味も。監督かな?三好GKコーチかな?選手達かな?

全く違ったところにあった情報がクロスする瞬間が自分の頭の中で生まれるには、情報の蓄積が大事だなあと感じるし、映像やイメージも言葉に置き換えられることが大事だなあと感じている。
そのためにもV長崎は監督や選手たちが取材をできるだけ多く受けられるようにして欲しい。
文字で残る情報量はチームの歴史と比例しチームの財産だし、チームの強力な宣伝マンでもあると思う。誰もが目にできる媒体でのチームのアピールはどんどん取材を受けることだと思う。Vファーレン長崎はまだまだチームをアピールするための情報が少なすぎるのだから。


by windowhead | 2018-09-19 20:08 | フットボール周辺

日本の西海岸・長崎からのつぶやきはビンの中の手紙のように漂いながら誰かのもとへ


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