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コメントよりもプレーで魅せる!それがプロだろ。

一昨日のフジテレビ「すぽると!」で、ラグビー「サントリーサンゴリアス」の清宮克幸監督(テレビ通販番組で「セサミン」とかいう健康食品のCMに出てくるよね)がびっくりするような発言をした。

清宮氏とプロ野球・野村克也氏(東北楽天ゴールデンイーグルス監督)と格闘家・角田信朗氏の対談だったが、そのなかで、メディア対応能力のような話の部分で、清宮氏は、野球選手は慣れもあり、ラグビー選手は、社会人として鍛えられているからメディア対応力があるが、サッカー選手はぜんぜんだめ、話せないというようなことを言った。より忠実に彼の発言を起こすと下記のようになる。

「野球選手は、慣れているというか上手く話せますよね。ラグビー選手も社会人を経験しているだけあって、そこそこ話せる。でもサッカー選手って全然話せないんですよ。あれを見た親御さんが 自分の子供にサッカーをさせようとは思わないでしょうね。」

野村氏も角田氏もうなづいていたので、彼らもそう思っているのだろうか。

たしかに、プロサッカー選手の多くはメディア(特にテレビ)に向ってぺらぺらしゃべったり、気の利いたことを言ったりはしない。引退した中田選手はときどきあからさまにメディアの反感をかうような態度を示したりもした。しかし、それをもって、しゃべれないと判断していいのかな。ましてや、「あれを見た親御さんが 自分の子供にサッカーをさせようとは思わないでしょうね。」とまで言われるほど知性がないと判断していいのかな。

少なくとも、メディアに向って、求められているとおりの通り一遍のコメントをしたり、タレントっぽい受けねらいの発言ができる選手より、朴訥でも正直に自分の言葉で受け答えできる選手のほうが信じられないか。

たとえば中村俊輔。
声は小さいし、リップサービスはない。さらに、話はなめらかに流れない。些細な言葉を言い直しする。しかし、質問に対して、真摯に対応しているし、自分のイメージや今の気持ちをもっとも的確に表す言葉を選ぼうとしている努力が感じられる。だから、つい、言葉を言い換えるとき、それらの違いから、彼がなにを言わんとしているかをイメージし、理解する欲望と共感をファンは共有できるのだ。
自分のイメージをできるだけ正確に伝える言葉を捜して答えている中村俊輔は、日本のアスリートの中でも誠実でクレバーな選手の一人だと思う。
さらに、W杯ブラジル戦の直後のコメントでは、マイクを向けられて、本当に永久にしゃべらないんじゃないかと思うほど長い沈黙のすえ、一言「課題の残る試合でした」といった。このシーンを取って、サッカー選手はしゃべれないと言われれば、そうかもしれない。しかし、このコメントを見ながら、サッカー解説者中西哲生は生放送の番組で不覚にも涙を流した。
私たちが、メディアを通して知りたいのは、型どおりのコメントではなく、自分たちが体験できない極みでがんばるアスリートたちの真の姿、心の声なのだ。
小野伸二も言葉は少ない。でも、あの天才的なプレーは、きっと本人も言葉にできないほど自然に湧いてくるものなのだろう。それを言葉に置き換えろというほうを無知をいうべき。

昨日のトヨタカップでのロナウジーニョのプレーの魅力を解説するバカはいない。中継し解説していた解説者たちが、「解説する必要はないでしょう」といっていたくらい。
プロスポーツ選手は、言葉でメディアに対応するより、プレーで魅せてくれればいい。

メディア対応力というなら、メディアの側も勉強すべきだろう。中田選手が日本のメディアにいらだっていたのはなぜか、メディア側は考えただろうか。本気で彼のコメントを聞きたかったら、お互い歩み寄りができたのではなかったか。

と、書きつつ、思いついた。ラグビーはアマチュアスポーツだった!と。

清宮氏はアマチュアスポーツの監督だった。だから、あのような失礼な発言ができたのだ。彼はメディアに対しても指導者としても「アマチュア」だったのだ。

すくなくとも、指導者としてのプロなら、他の競技であっても、そこで頂点を極めようとがんばる選手たちへのリスペクトがあるはず。それがないと、人の指導はできないだろう。ましてや、自分が関わっていないカテゴリーの人を確かな調査も裏付けもなく侮蔑するような発言はでてこないはずだ。

さらには、自らメディア対応力のなさも露呈してしまった。

「……あれを見た親御さんが 自分の子供にサッカーをさせようとは思わないでしょうね。」
この言葉が、どれほど「親御さん」をばかにしているか。ぺらぺらと用意された優等生的なコメントをしゃべったり、TV慣れした気の聞いたコメントを話す選手が優れているかどうか、大人は知っているんだよ。会社で、口の達者なお調子者と朴訥ながんばり屋のどちらが信頼して仕事をまかせられるか体験しているんだよ。それが大人なの。母親たちだって、知っているの。
これを見ていた親御さんは、きっと、清宮氏には子どもをあずけたくない!と思っただろう。

一言多すぎたね。
この一言を言うか言わないか、メディア対応力とはそういうもの。
プロサッカー選手が多くをしゃべらないのも失言や誤解をまねかないためのメディア対応力あってのことかも?と、憶測すらできなかったかなあ~。

ノムさん、角田さん、さすがに狸ですわ。うなずいたが、言葉にはしなかった。
彼らは、プロとして生きる選手たちへのリスペクトはあるんだと、まあ安心した。


そういえば、清宮氏は、早稲田大学出身だったね。Jの川渕キャプテンも釜本さんも早稲田の先輩だよね。サッカー選手のことが本当に心配ならメディアでいわずに、先輩に言えばいいのにね。

昔々、故宿沢氏のいた早稲田ラグビーを見てラグビーに惹かれていたこともあったなあ。それがなぜサッカーファンになったのだろう?そんなことを考え直してみるきっかけになった「すぽると!」

それにしても、不用意な発言だったよね。清宮さんは。
by windowhead | 2006-12-15 14:39 | 紙のフットボール

日本の西海岸・長崎からのつぶやきはビンの中の手紙のように漂いながら誰かのもとへ


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