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オシム監督退院!だからこそ今「SVABO!OSTANI!」

昨日オシム監督(あえてこの呼び方を使う)が退院したそうだ。
すでに岡田体制になったとはいえ、オシム監督の薫陶を受けた選手たちが主力をしめている今の日本代表。バーレーン戦を前に、選手たちにも、最高のニュースになったのではないかな。

オシム監督の「退院にあたって」というメッセージが財団法人日本サッカー協会のホームページで発表されていた。
久しぶりに読むエスプリの効いたメッセージに、ちょっと胸が熱くなる。

「~みなさまには次のようにお願いします。
スタジアムに足を運び、選手たちに大いにプレッシャーをかけて下さい。もっと走れ、もっとプレースピードを速くしろと。
そして選手たちが良いプレーをした時には大きな拍手を与えて下さるように。」

なんというサッカーへの愛にあふれたメッセージだろうか。
オシム監督のメッセージを日本語に訳してくれたのは、千田さんかな。今年もオシム監督の通訳として、話し相手として多くのものを吸収し、近い将来日本代表を率いたオシム監督とそのサッカー観を1冊にまとめて欲しい。


オシム監督が日本代表を率いなくなって、今でもその喪失感の大きさは薄まらない。
日本代表の周りからワクワクしたものが無くなってしまった。
松木安太郎氏が「サッカー番長」(杉山茂樹編集)という雑誌の中で「オシムのサッカーが新しいわけではない。あんなの昔ヴェルディーで自分たちもやっていた」と語っていた。
たしかに、サッカースタイルはトータルフットボールと言われる基本的なスタイルなんだろう。それでも、オシム監督がそれを日本の選手に伝えるとき、そこには選手を魅了する「なにか」があったのだ。だからあの1年、選手も日本中のファンもオシム監督に魅了され続けたのだろう。
それは、中村俊輔選手や鈴木啓太選手が、岡田監督就任以後のインタビューでも、オシム監督とそのサッカーにリスペクトを送りつづけていることを見てもわかる。
中村選手は木村元彦氏のインタビューで「オシム監督のサッカーは、未来のサッカーと言う感じがした」と語っている。
日本の選手、いや岡田監督も含めて日本のサッカー界で、最もリアルに世界のサッカーと接している選手が言う言葉だ。重みがある。
オシム監督の交代を一番残念に思っているのは、中村俊輔選手ではないのかな。それと鈴木啓太選手。私は、鈴木選手が、オシム色のバロメーターと思っている。岡田ジャパンから、もし鈴木啓太選手が外れることがあったら、そのときが日本代表および日本のサッカーからオシム監督の理想が消えるときだと思っている。それはまた、日本のサッカーが混沌とするときかもしれない。

きょう、日本代表がどのようなサッカーでバーレーンと戦うのかぜんぜん見えない。
どのようなサッカーでも勝てばいいのかもしれない。
オシムサッカーの特長でもあったスペースをつくりながらの連携より、ドリブルとミドルシュートでゴリゴリいく方が個人技に優れた選手だと持てはやされる雰囲気が最近の日本のサッカーメディアから感じられる。しかし、今の代表選手の個人技がどれほどのものなのか、世界との比較はまだ見ていない。彼らの個人技はJリーグの中での比較でしかない。今日のバーレーン戦でそれが試される。



バーレーン戦の当日、オシム監督の退院メッセージにかこつけて、いまさらのようにオシムサッカーを思い出そうとするのには訳がある。

「サッカー批評」38号で驚くような記事を読んだからだ。
サッカー協会の小野剛技術委員長がインタビューの中で、岡田監督を選んだ理由について語っている部分だ。
「オシム監督が築いてきた土台の上に新しい色、個性を積み上げられる」人という理由で岡田監督が適任となったらしいが、この「オシム監督の土台」というのは「サッカーのスタイル」でも「これまでのメンバーによるチーム」でもなく「日本人選手のよさを出すサッカーをする」ということだという…。
驚くというか呆れるというか…。
最も具体性に欠ける部分をもって「オシム監督の土台」とするのだという。
「日本人のよさを出すサッカー」とは何か?それをオシム監督は1年間である程度まで作り上げてきてくれたと言うのに、それは踏襲する必要はないというのだ。

だから岡田監督は就任時に「オシムさんのサッカーはオシムさんにしかできない」と最初からオシムサッカーを捨てたような発言ができたわけだ。
すでに彼の就任時に、オシムサッカーはリセットされていたことになる。
そのことは選手たちにはどのように伝えられたのだろうか?選ばれた選手たちは、新しい監督のやり方にあわせて戦っていくだけかもしれない。
じゃあ、私たちファンはどうだろう。サッカー批評で初めて語られたこと。「オシム監督の土台」に期待している人は多い。それが「日本人選手のよさを出すサッカーをする」と言う部分だけと知ったとき、どれほどの落胆を味わうことか。

今後、オシム監督が選んだ選手たちがどんどん消えて岡田監督好みの選手に変わってくるだろう。中村憲剛選手、遠藤選手、鈴木啓太選手、阿部勇樹選手、巻選手が消えていくのかもしれない。現実に献身的な走りと守備の加地選手を攻撃参加しかできない内田選手に変えた。
小笠原選手、本田選手、小野選手を!との声も聞かれる。オシム監督がなぜ彼らを選ばなかったのか。そこに、オシムサッカーの本質があったのかもしれない。

バーレーン戦は、東アジア選手権を試運転の場とした岡田サッカーの現時点での完成形が見られるわけだ。
そこにはオシムの理想は微塵もないのだと自分に言い聞かせて選手たちを応援することにしよう。

「…そして選手たちが良いプレーをした時には大きな拍手を与えて下さるように。」
オシム監督のメッセージだからね。


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備忘録として、オシム監督のメッセージの全文を転載させてもらおう。協会のページのリンクがいつ切れるかわからないから。

~退院にあたって~

「このほど入院治療から“解放”されるにあたり、これまでご支援、激励を寄せて下さった日本全国および世界各地のサポーター、日本サッカー協会をはじめとするすべての皆様にあらためてお礼申し上げます。
とりわけわたくしの生命を救って下さった順天堂浦安病院、帰宅できるまでに回復を助けて下さった初台リハビリテーション病院の医師、看護士、スタッフの方々にはわたくし個人と家族一同より心から感謝いたします。プロとして適切な処置・治療をして下さり、わたくしのような重症の場合でも、助言に耳を傾け、規則正しく規律ある努力を続ければ社会復帰できるということを身をもって証明しました(といっても、集中治療やリハビリを受けるような病気になるようにお勧めするわけではありません)。
私個人はこれからもリハビリトレーニングを続けてまいりますので、今後ともご支援をお願いします。
FIFAワールドカップ2010年大会の予選、北京オリンピックでの健闘と幸運を祈ります。日本サッカーの進歩は常に私の関心事ですから。応援しています。
また、みなさまには次のようにお願いします。
スタジアムに足を運び、選手たちに大いにプレッシャーをかけて下さい。もっと走れ、もっとプレースピードを速くしろと。そして選手たちが良いプレーをした時には大きな拍手を与えて下さるよ
うに。」

2008年3月25日 イビチャ・オシム

by windowhead | 2008-03-26 16:19 | 紙のフットボール

日本の西海岸・長崎からのつぶやきはビンの中の手紙のように漂いながら誰かのもとへ


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